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現役大学図書館司書の仕事と日常について。

【読了記録】長江俊和「出版禁止」感想

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世間ではお盆休みですね。

私が働く図書館もさすがにお盆はお休みなので、今はお家でのんびり過ごしています。

 

今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で実家に帰省することができないので、いつもよりも引きこもりがちな夏休みになりそうですね。

 

さて、前回長江俊和さんの「出版禁止 死刑囚の歌」の感想を記事にしましたが、この本がとても面白かったので前作である「出版禁止」も読んでみました。

こちらは2作目よりも、ミステリーホラー感が強いように思いました。

 

ネタバレはありませんので、未読の方も安心してご覧ください。

 

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sen0813tanu.hatenadiary.jp

 

 

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*>あらすじ<*

 

著者・長江俊和が手にしたのは、いわくつきの原稿だった。題名は「カミュの刺客」、執筆者はライターの若橋呉成。内容は、有名なドキュメンタリー作家と心中し、生き残った新藤七緒への独占インタビューだった。死の匂いが立ちこめる山荘、心中のすべてを記録したビデオ。不倫の果ての悲劇なのか。なぜ女だけが生還したのか。息を呑む展開、恐るべきどんでん返し。異形の傑作ミステリー。

 

新潮社HPより 

 

 *>感想<*

 

"とある理由"で出版されることがなかったルポルタージュを著者である長江俊和さんが読み、その凄惨で悲しい真実を世に広めるために本にまとめたというのが今作の形式です。

 

本編のほとんどが「カミュの刺客」というルポルタージュから成っています。

 

内容はあらすじの通りなのですが、手探りの状態から真実に一歩ずつ近づいていく様が緊迫した雰囲気とともに綴られています。

そして残念ながらそのルポルタージュは悲しい結末を迎え、ある理由から出版間近になっていたにも関わらず出版禁止となってしまいます。

 

ルポルタージュを執筆した若橋はどうしてそのような行動を起こしてしまったのか。

ルポルタージュだけを読むと"心中"という行為に囚われた筆者の苦悩と決意が淡々とつづられているように見えますが、その真意を作者長江俊和のあとがきという形で解説されています。

このあとがきを読めば物語の真相自体はわかるので、謎解きが苦手な人でも話の流れは理解できるかと思います。

 

ただそのあとがきも100%解説されているわけではなく、読者に解釈を委ねている部分もありますし、ルポルタージュに仕掛けられている"仕掛け"を知るとルポルタージュの読み方が変わってくるので、もう一度読みたくなるような作品となっています。

 

次作「死刑囚の歌」を詠んだ時にも思いましたが、長江俊和さんは謎を残すのがとてもお上手ですね。

最後まで読めばその事件の全容は理解できるが、全ては語っていない。

読者に疑問を多少残しつつ、トリックのヒントを与えるのでその疑問を解消するべくもう一度読んでみたくなるんです。

 

特に今作は「死刑囚の歌」と比べて後味はあまりよくないものとなっており、読者もモヤっとした方が多いかと思います。

その分解釈もそれぞれあるので、いろいろな人の解釈を読めるのは面白かったですね。

 

あと、個人的な感想としてエグさが予想の斜め上でぞくぞくしました。

 

ルポルタージュ後半の違和感には私も気付きましたが、まさかあんなことになっているとは……!!

よく2chのまとめで「意味が分かると怖い話」を好きで読むのですが、それに近い物を感じましたね。

 

また、全体を通してのテーマ"心中"についても深く考えさせられます。

「天に背いて」「愛と共に逝く」。その向こうに「極上の悦び」はあったのでしょうか。

本当に、愛はそこにあったのでしょうか。

 

私は読み終わったとき、やはり「愛と共に逝く」なんて普通の人間にはできないと改めて思いました。

心中ができる人は、きっと愛に狂っている人だけなのだと。

 

あなたにはどのように真実が見えるでしょうか。

ぜひ、ご一読を。

 

 

 

Manfred Antranias ZimmerによるPixabayからの画像

 

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