道尾秀介『シャドウ』の感想【ネタバレあり】
今回は最近読んだ本の感想をまったりと書いていこうと思います。
記念すべき最初にご紹介するのは、道尾秀介氏の「シャドウ」。
実は私、道尾秀介さんのファンでして。
とは言っても全部は網羅できていない"にわか"なので全作品は網羅できていないのですが、「向日葵の咲かない夏」からゆっくりと作品を追っているところです。
今回読んだ「シャドウ」もすごく面白かったです。
やはり終章に向かってパズルのピースがはまっていくところがミステリの醍醐味ですね。
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*>あらすじ<*
人は、死んだらどうなるの?――いなくなって、それだけなの――。
その会話から三年後、凰介の母は病死した。父と二人だけの生活が始まって数日後、幼馴染みの母親が自殺したのを皮切りに、次々と不幸が……。父とのささやかな幸せを願う小学五年生の少年が、苦悩の果てに辿り着いた驚愕の真実とは? いま最も注目される俊英が放つ、巧緻に描かれた傑作! 本格ミステリ大賞受賞作。
*>感想(ネタバレなし)<*
とにかく、後半から「そうだったのか!」の嵐でした。
道尾秀介さんの作品は他にもいろいろと読んでいるので、僅かな言い回しの違和感や小さな比喩などにも気をつけて読んでいたのですが、道尾秀介さんは私の想像の更に上をいく驚きをもたらしてくれました。
節ごとに登場人物の視点が変わるので、それぞれの気持ちや背景を考えながら読むのですが、まさにそれを逆手に取られたような気持ちです。
ミステリーというのは「犯人が誰であるか」が分かってしまうと終わりだと思いがちですが、今作では犯人は登場人物の何人かはすでに犯人を知っていて、それぞれ解決の糸口を探ります。
読者である私たちは終章まで黒幕を知ることはありませんが、登場人物の様子や散りばめられたピースで必死に食らいつきます。
そこで最後に主人公賀茂凰介とともに全てを知ることになるのです。
道尾秀介さんの代表作「向日葵の咲かない夏」に対してこちらは救いのある作品、とのこと。
私はそちらの世界観も好きなのですが、こちらは両家族にきちんと救いが用意されています。読後感も良いのですっきりと終わりたい方にもおすすめです。
この驚きはきっと予想できませんし、皆さまを心地よくしてくれるでしょう。
ぜひ、ご一読を。
*>感想(ネタバレあり)<*
ここからは物語の核心に触れるネタバレがあります。
読後の方、ネタバレを恐れない方のみスクロールしてください。
読み進めていて、まず始めに「きたきた!!」思ったのが第四章の(一)賀茂洋一郎の最後の一文。
俺は正常だ。おかしいのはこいつだ。この老いぼれがおかしいーー。
運動会のはちまき、パソコンの「ごみ箱」の中身。亜紀に暴行した犯人を凰介に言えない理由。
ずっとどこか怪しげな雰囲気を漂わせていた洋一郎が、やっと読者にはっきりと頭角を現し始めました。
しかしどこかで「このまま洋一郎が犯人なのか……?」と疑問に思いますよね。
私自身も「きっと洋一郎じゃないんだろうな」という漠然とした予想はありましたし、真犯人が田地先生だということも何となく想像はついていました。
でもさすがに洋一郎が「統合失調症が再発したフリをしていた」ということは見抜けませんでした!
他の登場人物と同じように、洋一郎の演技に騙されていたというわけです。
こうして振り返ってみると、「この老いぼれがおかしい」という文は洋一郎の本心だったんでしょうね。
恵が亜紀と心中しようとしたことも見抜けず……。
漠然と「犯人」にこだわり続けた自分の思慮の浅さを痛感したと同時に、こんなにもたくさんの驚きをもたらせる道尾秀介さんのすごさを改めて感じました。
しかし、あえて見抜こうとしなくても良いのかもしれませんね。この裏切りと驚きとパズルのピースがはまったあとの爽快感を味わうためにミステリーを読んでいるのですから。
読むたびに思っているような気がしますが、ファンをやっていて良かったと思える作品でした。
ありがとうございました。
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