道尾秀介「スケルトン・キー」の感想【ネタバレあり】
前々回の記事で道尾秀介さんの「シャドウ」の感想を書きましたが、今回も同じく道尾秀介さん「スケルトン・キー」の感想となります。
「シャドウ」の時も後半驚きっぱなしで「この驚きの連続はさすが道尾秀介……!」と感じていましたが、今作「スケルトン・キー」もかなりすごいお話となっています。
テーマはずばり、"サイコパス"。
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*>あらすじ<*
僕に近づいてはいけない。 あなたを殺してしまうから。
週刊誌記者のスクープ獲得の手伝いをしている僕、坂木錠也。この仕事を選んだのは、スリルのある環境に身を置いて心拍数を高めることで、“もう一人の僕”にならずにすむからだ。昔、児童養護施設<青光園>でともに育ったひかりさんが教えてくれた。僕のような人間を、サイコパスと言うらしい。
ある日、<青光園>の仲間の“うどん”から電話がかかって来て、平穏な日常が変わり始めた。これまで必死に守ってきた平穏が、壊れてしまう――。 /角川書店
*>感想(ネタバレなし)<*
主人公はいわゆる"サイコパス"という言われる人格で、恐怖という感情を感じにくくなっている。
養護施設の頃からその"おかしさ"は現れていて、先生に大火傷を負わせたり初恋の女の子の非人道的な里親の家を放火したりと、読んでいると「この人とはお友達にはなれないな……」という一面がちらほら垣間見えます。
そのサイコパスな主人公が一つの殺人を起こしたことにより、さらなる死の連鎖が連なっていって……。
基本的にこの主人公目線で話が進むので、雰囲気はずっと陰鬱とした感じです。
道尾秀介さんのこの雰囲気は「向日葵の咲かない夏」をはじめ、多くの作品で感じることができ、彼の作品が"人を選ぶ"と言われている一因となっています。
個人的にはこの雰囲気がとても好きなので、ガンガン読みすすめることができました。
読み進めていく中で、確かに主人公はちょっと日常から逸脱しているのですが、それでも感じる"違和感"がありました。
違和感は1つではなくいくつも点々とちりばめられていて、それを抱えたまま第三章に突入します。そこで読者が知ることになる一つの真実に、私は震えあがりました。
文中で感じた違和感がピタリと当てはまって、その真実を知った時点で急いでページを戻り確認してしまいます。
「シャドウ」は主人公と一緒に答えに辿り着くようなストーリーでしたがこちらは主人公は全部知っているので、主人公の行動や所作、果ては小説そのものにヒントが隠されていたのです。
トリック自体はミステリーによくあるものですが、この驚きと充足感は今作でしか味わうことができません。
終章は主人公が母親の声に辿り着きます。そのメッセージもとても感動しますし、また、後悔や悲しみも感じます。私はただのハッピーエンドと取ることができませんでした。ハッピーエンドというには悲しすぎます。
皆さんもこの驚きを感じてみてください。
ぜひ、ご一読を。
ちなみに作者の道尾秀介さん、この「スケルトン・キー」をモチーフに楽曲も発表しております。
読んでから聞いてみるとまた印象が違うかもしれません。あわせてぜひ。
道尾秀介『HIDE AND SECRET』Official Music Video
*>感想(ネタバレあり)<*
ここからは物語の核心に触れるネタバレがあります。
読後の方、ネタバレを恐れない方のみスクロールしてください。
もう完全に「やられた!!」ってなりました。
実は双子でした!というトリックは結構ありきたりなものですが、道尾さんは上手くそれを隠しつつヒントを出しているので、第三章の七節を見たときに慌てて第一章・第二章の殺人場面を見返しにいってしまいました。
主人公が新しいのを購入しても袖の破れたジャケットをずっと着ている理由、ひかりさんが珈琲を2杯淹れたのに紅茶を飲んでいる理由、さらに章と節のフォントの差・・・。
おかしいと思っているところはいくつもあったのに、双子という事実には全く気付けませんでした。
むしろこんなにヒントがあったのに!
錠也、鍵人それぞれの視点で読み返すと確かに筋が通っていて、「なるほど」の嵐でした。
「 主人公はサイコパス」という観念に囚われすぎて、「普通じゃありえないけどこの主人公ならやりかねないな・・・」と思ってしまったのが道尾マジックですね。
こんなに興奮したのは久しぶりでした。読んでいてすごく楽しかったです。
ありがとうございました。
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アイキャッチ:Alexas_FotosによるPixabayからの画像